ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第11章 風が止む
「中へ」
全員集まれる食堂へと集めた。
「次の島をログポースはさしてるね?」
リンはベポに問いかける。
「うん、指してるよ」
「じゃあそこへ向かって。できれば潜水しないで行って欲しい」
「リンは?ねぇ、どうして?」
ベポは耐えきれずに聞いてしまった。
「ベポ‼︎」
ローが怒鳴る。普段ベポに強く当たったことがないだけに、全員が驚く。
「…そんな怖い顔しないでロー。いずれこうなるとは少しだけ思ってた。覚悟はできてる」
リンはローの目の前に立つ。
「2年。2年だ。機を狙って私は戻ってくる。絶対だ。それと…」
「…お前の心臓」
「うん。よろしく頼む」
ローは能力《メス》でリンの心臓を取り出した。
ぽっかりと正方形の空洞が胸にできる。
「これで海軍も脅せる。皆、ちょっと色々探ってくるね」
「リン…」
「体壊すんじゃねぇぞ」
「絶対死ぬなよ」
「誰が死ぬかアホ」
ドス、とチョップを食らわす。死ぬなよと言ったのはシャチだった。
「…ちょっと恥ずかしいけど…」
ぐいっとローの襟首を掴んで、唇を合わせた。
「「「「!!!」」」」
「二年後、私戻ってくるから」
「当たり前だ。お前に戻ってきたくねぇなんて拒否権は」
「ないからね」
にこっと言うと、ローは耐えかねたように思いっきりリンを抱きしめた。
リンは一人甲板に現れ、周りを警戒しながら海軍の船へと飛んでいく。
それを確認したハートの船は動き出した。
黄色い潜水艦は徐々に小さくなっていき、やがて見えなくなった。
「さぁ、お前の言う通りにしてやったぞ。いい加減その手の上にある竜巻を消せ」
「…いいよ」
竜巻を消し、カツカツと奥から出てきた長身の男と対峙する。
「あー、あんたが風使いねェ…思ったより小柄で可愛らしいじゃないの」
「…青キジって人でしょ、あなた」
「あら、おれのこと知ってるの」
リンは頷く。
「まぁこんなとこで立ち話なんかしないで、中で話そうか」
案内しろ、と部下に伝え、カツカツと気だるそうに船内へ歩いていく。
リンもそれに続いた。