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ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話

第11章 風が止む



『トラファルガー・ロー‼︎取引をしろ』

海軍の方から拡声用のでんでん虫を通して呼びかけられる。


『風使い、リンをこちらに渡せ。お前らとてここでまだ終わりたくないだろう?』

「なにをふざけた事を…」

ローは腕の中にいるリンを強く抱きしめ海軍の方を睨みながら言った。

『さぁ、取引するのか、しないのか』

甲板に集まっていたクルー達は戦闘態勢に入っている。

「ロー、応じて」

「⁈…なにを言ってんだ」

「取引に、応じて」

リンは、何故だと言わんばかりの表情をしているローに切なげに微笑みかけ、その腕の中から立ち上がり、クルー達をかき分け、ふわりと浮かぶ。

「取引に応じる。だがこちらの条件を全て受け入れてもらう。でなければ私はここでお前らを全員沈める」


『ほう…お前の能力はわかっている。条件を聞こう』

「まず、この海賊船及び船員に手を出すな。そして、この船が見えなくなるまで待機してもらう。追うようなことがあればすぐにお前らを全員殺す」

『ずいぶん思い入れがあるんだなぁ。孤独なお前が心を許せる仲間ができたと?』

「その推測、小説的には面白いが残念だな。生憎そうではない。私が脅して乗っていただけだ。お前ら海軍のお陰で私の力は相当知れ渡っているようで、随分簡単だったよ」

リンの表情は、ハートのクルー達もローも見えなかった。


「リン…嘘…だよね…」

ベポが心配そうに言う。そこに、治りかけのペンギンとシャチがやって来る。

「嘘だ、全部。おれ達を庇おうとしてんだ」

シャチがベポに言った。


「とうとう来たか…」

ペンギンは帽子を深くかぶり直した。



「…っ全員、配置に戻れ。船を出すぞ。潜水の準備をしておけ」

ローの言葉に、クルー達は振り返る。全員が納得していない顔で。


「船長…なんで…」

「相手が悪い。左右の軍艦にはそれぞれ大将が乗ってやがる…」

「でも!リン…」

ペンギンは言いかけたクルーをギッと睨む。

「リンが何のために、あんなことしてると思っている」

「…」

クルー達は皆項垂れた。



『五分やる‼︎五分後、お前はこちらに来い。そして、お前の言った条件通りに事を進めてやる』

「わかった」



リンは甲板に降り立った。
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