ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第11章 風が止む
最近、不安要素が浮上し始めた。
それは、海軍との遭遇率が異様に高いことだ。
度重なる戦闘で、船員の半分は治療をしている。
リンは、自分に腹が立っていた。
というのも、ローに戦闘時は出てくるなと言われていたのだ。顔が割れているといえども、中にいた方が安全だと。
しかし、リンにとって船員が傷ついていくことが悔しくて悲しくてしょうがなかった。
「ロー、私も戦う」
「言っただろ、駄目だ」
夕食の際、リンはローに言った。
「嫌だ。私はこの船の皆が傷ついて行くのを何もせずに見ているだけなんて耐えられない」
「治療を手伝ってるじゃねぇか」
「そうじゃなくて‼︎」
バン!と立ち上がる。
クルーもローも、こんなリンは初めて見た。
静まる食堂。
いつもは賑やかなのに、今日は凍りついたような空気だった。
「相手はそこら辺の低俗な輩じゃねぇんだ‼︎海軍だぞ⁈お前が敵わない相手だってザラにいるんだ‼︎」
「そんなのわかってる‼︎だけど…我慢できない…‼︎」
ぎゅっと拳を握るリン。
「…ペンギンは腹部を剣で、シャチは腕と足を撃ち抜かれて…ほかにもたくさん…命はあるけどボロボロだ…私がいたら…防げたかもしれない…‼︎」
「あの時は状況と相手が悪かった」
「私がいれば違ったかもしれない!」
「お前な…‼︎」
バン‼︎とローも立ち上がり、リンを鋭い目で見下す。
「お前がいたところで、俺たちの力はまだそんなもんだってことだ。守れもしないモンを表に出すバカがいるか‼︎」
「っ守られるような人間じゃない…前も言ったでしょ?…性に合わない」
「馬鹿か‼︎おれはお前が…っ…」
ローは口を閉ざした。
クルー達も、こんなに怒っているローを久々に目にした。
しかし、ただ怒っているのではなく、リンを守りたいがために声を荒げていることはクルー全員がわかっていた。
「後で話す」
パタンと食堂を出て行くロー。その後少し間を空けて、リンも外へ出た。
進行方向の方にある甲板、手術室からではないと直接入れない甲板に、飛んで行った。
すると、ベポが来た。