第1章 一山いくらの林檎 前
あぁどうしよう。いい歳した男女がお泊まりですって。ここから先はピュアな私には何一つ分かりません事よオホホホホ。
・・・この展開はどう考えてもあれだ。18禁だ。あはんでうふんな展開だ。それは避けて通れない事だろう。
でも牛尾から迫って来るようなそういう素振りは一切無い。
まぁコイツに限って「都合のいい女だ、食っちまえ!」なんて無いに決まってるんだけど、それでも一応はいい歳した男女でして、でもでも牛尾のような紳士だったら何もしないのも当然のようにも思えるし、何より牛尾からしたら友人としての純粋な酔っぱらい介護なのかもしれない。
っていうかあたしは何を考えているの?何もしてこない紳士の方が女として好意的なはずなのに、まるで襲われる事を期待してるような思考回路でいるなんて!あたしったら不潔!淫ら!牛尾に謝れ!
訳が分からなくなったあたしは近くのクッションに横になった。
ぼふんっと音を立ててあたしの体を受け止めたクッションはふかふかで、あたしの夢見心地をさらに加速させた。
「まだ酔いが回ってるのかい?」
牛尾の優しい声が降って来る。頭がくらくらした。
「悔しいけど、牛尾みたいに強くないからね。」
「僕も結構酔ってるよ。いい気分だ。」
真っ白な顔をして何を言ってるんだか。いつも通りでなんとも無さ気な牛尾の笑顔が酷く憎たらしかった。
あぁもう!!酔っぱらいのあたしは頭がオーバーヒートです!!
神様!!これは一体!!どういう意味なんですか!!