第1章 一山いくらの林檎 前
遅くなったけれど、ハッピーバースデー!
そんな言葉とともに出てきたのは、可愛くラッピングされた誕生日プレゼント。
人からお祝いされたり何かを貰い慣れていないあたしは、きっと幼稚園児みたいに喜んでいただろう。
見るとそれは高くは無いけど前から使ってみたいと思っていた物で、あたしはこれを機会にこのブランドの店舗に足を運ぼうと決意する。
そこまではよくある話であって、まぁ何もおかしなところは無かったんだけど。
「牛尾って誕生日いつだっけ?」
「あぁ、5月4日なんだよ。」
頬杖をついてにこにこと答える牛尾。
あたしの顔から笑顔が消えた。
まさか牛尾の誕生日がとっくの昔に過ぎていたなんて。