第7章 境界
「アンダーテイカー、いるかしら?」
「おやおや? これは珍しいお客さんじゃないかい。アリス嬢、お久しぶり」
「愛用の銃を取りに来たわ」
「……なんでまた?」
「ちょっとそこまで、お姫様を助けに?」
茶目っ気たっぷりに言い切ってやれば、後ろでセバスチャンが咳払いをするのが聞こえた。
「そこにいるのは、伯爵の執事君じゃないかい? なんでまた、彼女の傍に?」
「お久しぶりですね。これにはそれなりに深い事情がありまして、仕方なく」
「へぇ……まぁ、いいけどさ。それより、愛用の銃が欲しいなら、勿論手土産はあるよね? 何もないとは言わせないよ小生は」
「……セバスチャン、貴方に一任する」
「はぁ……こういう時ばかり、人使いが荒いのですから」
セバスチャンの指示で、仕方なく店の外へ出る。暫くして、盛大なアンダーテイカーの笑い声が聞こえたかと思えば、いつも以上に真顔なセバスチャンが扉を開けた。
「……一体何をしたの?」
「知りたいですか?」
あまりにも綺麗に微笑むから、背筋がぞっとした。まだ生きていたい私は、空気を読んで遠慮しておくことにした。
「ひぃ、ひぃっ! 息が出来ないよ小生は……っ」
「なら、そのまま死んでもいいのよ?」
「アリス嬢は相変わらず恐ろしいことを平然と言ってのけるね。はい、これだよ」
小さなアタッシュケースを渡される。感触を確かめるように、受け取る。重みが、冷えた感覚が、私にこの銃の使い方を思い出させる。