第5章 予感
アリスとセバスチャンは、一旦シエルのいる部屋へ戻ることにする。一人残してきたシエルのを身を、一度確認しておく必要があるとアリスが判断したからだ。そんな彼女に、セバスチャンは困った表情を浮かべるだけだった。
「アリス様、坊ちゃんなら平気かと思われますが?」
「煩い」
「はぁ……クライヴさんと合流された方が、一番かと考えますが」
「なら貴方が連れてきてくれる? 同じ悪魔なら、居場所くらいすぐわかるでしょ」
「悪魔であることは、発信機とは異なります」
「使えないわね……」
「あくまで、執事ですので」
長く続く廊下、普段は気にならないが流石のアリスもなかなか辿り着けないもどかしさで、苛立ちを募らせる。角を曲がろうとした瞬間、後ろからセバスチャンが彼女を抱きすくめた。
「っ……!?」
「アリス様、危険です」
セバスチャンは彼女を抱き抱えたまま、ゆっくり曲がり角の先を覗き込んだ。そこにいたのは、拳銃を持つ男と二人のメイド。
「おいおい、お嬢さん達可愛いね。俺達のいうこと聞いてくれたら、見逃してあげてもいいよ?」
「どうする? リンス」
「カレン、戯言に付き合っている暇はありません。そこを通して頂きましょう」
「そんなこと言っていいのか? 今頃、シエル・ファントムハイヴがどうなっているか」
――伯爵が、もしかして捕まっている?
ちらりとセバスチャンの顔を見れば、顎に手を当て何かを考えている様子だった。アリスの視線に気付いたセバスチャンは、彼女の耳元に唇を寄せた。