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黒執事 Blood and a doll

第3章 一夜



「……それはお前のとこの使用人が、優秀でないからだというのに。ね?」
「……。貴女とは、とてもよく気が合うようです。アリス嬢」


 クライヴが扉を開けた先にあったのは、広い書庫。中へとアリスが招き入れると、シエルは自らの屋敷にある書庫を思い出した。左右見回していると、すぐ傍に彼女は近寄った。


「伯爵、良ければ一緒に読書などいかが? 嫌いでなければだけど」
「読書は好きだ。喜んで」
「お互いを知る手段というのは、交わされる言葉だけとは限らない。そうは思いません?」
「それもそうですね。しかし……こんなに広い書庫、なかなかないですね」
「そうでしょう? ふふ、自慢の書庫なんですよ」
「姫様。私はお食事の支度を……」
「わかったわ。お願いね、クライヴ」
「はい」


 クライヴはアリス達へ深く会釈し、書庫を出た。向かう先は厨房。ナタリーが上手くやっていてくれることを願いながら、メインディッシュとドルチェのメニューを頭の中に浮かべる。


「クライヴさん」
「……セバスチャンさん?」


 クライヴが振り返った先には、セバスチャンが物腰柔らかく立っていた。


「私にも、何か手伝えることはありませんか?」
「客人にそのようなこと」
「執事として、給仕をしたいのです。どうしても」
「……余程、執事という職業に誇りでも?」
「いえ。アリス様に、是非私のデザートを食べて頂きたいのですが……いかがでしょう? もしまだデザートが出来ていないようでしたら。坊ちゃまからお墨付きを頂いているデザートを、振る舞いたいのですが」
「姫様に何かしたら、生きてこのヴァインツ家を出られると思わない方がいい」
「……あのお方に、何かするはずがありませんか」


 含みのあるセバスチャンの言葉に、クライヴは回答に時間をかける。小さく溜息をついて、懐中時計で時刻を確認した。

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