第23章 安息
「さあ? まぁ、でも……私、クライヴのことだけは信じていたの。絶対、私と最後まで共にいてくれるって。そしたら、この魂を彼にあげようって。悪魔の癖に、妙に優しくて気遣い屋さんで。いつの間にか、家族のように思ってた。もし復讐を遂げられたのなら、クライヴがね……ひょっこり現れるんじゃないかって思う。だから、その時を待っていたいと思う」
「いいんだな?」
「ええ……。シエル。ヴァインツ家は滅んだと……女王に代わりに報告してもらえるかしら?」
「ああ……」
徐に、アリスはシエルに抱き着いた。小さくありがとうと、口にしながら。シエルはそっと抱きしめ返すと。彼女の頭をゆっくりと撫で、瞳を閉じた。
あまりにも境遇が近すぎて、互いにどこか自分と重なる部分を見つけていた。
だからこそ、シエルはどこかアリスを放っておけなかったのかもしれない。屋敷に住んでいいと口にしたのも、そのせいかもしれない。
「……妬けますね、本当に」
扉を挟んだ一枚向こう、セバスチャンが控えていた。いつまでもアリスの部屋から戻らない主人を呼びに、ここまでやってきたのだ。だがどうやら、声をかけるにはまだ暫く時間が必要なようだった。