第18章 悪戯
「坊ちゃんたら……アリス様」
「なぁに? セバスチャン」
「今夜だけは、私と一曲踊っては頂けませんか?」
「しょうがないわね」
手を取り、既に踊りを楽しむ人々の中へとアリス達も入っていく。会場の端では、どうやらクライヴが二人をじっと眺めている。そこへ、アグニが声をかけた。
「妬けますか? 自分の主人がどこの馬の骨ともわからない相手と、ダンスを楽しんでいるのが」
「ええ……それはもう。特に、私はセバスチャンさんが一番苦手ですからね」
「クライヴさんは、本当にアリス様のことを大事になさっているんですね」
「勿論です。私だけは、あの人を裏切らないと決めていますから」
それでも、セバスチャンと踊るアリスの姿を見つめて複雑な思いが彼の中に生まれていた。もしも、アリスが今もセバスチャンの存在を求めていたら?
――その時私は、姫様に捨てられてしまうのでしょうか。
「クライヴさん? 怖い顔をしていますよ」
「……あ、いえ。何でもありません」
音の海に溺れていく。
ふと、突然会場内は停電する。