第86章 安定剤の効能は?
次の日の夕方。
机に向かい書類をしている最中、
ドアをノックする音が聞こえた。
「凛。大丈夫か?」
ドアを開けると、夕食を乗せた盆を持った
エルヴィンが立っていて、
辺りを見回し、誰もいないことを
しっかり確認してから部屋に招き入れる。
「それが意外と平気みたい。
処方してもらった安定剤が効いてるのかな。」
「そうか。それなら良かったよ……」
昨日は“よがり狂う君を楽しみにしている”、
と言っていたけど、
今のエルヴィンは、
心底安堵した顔をしていた。
やっぱりあの時の発言は、
私を安心させる為に言ったことだったんだと
改めて思い知る。
「夕食、持って来たよ。
一緒に食べようと思って。」
「ありがとう。
エルヴィン、仕事はもう終わったの?」
「ああ。無理矢理終わらせた。
リヴァイが訓練終わりで班員に掴まっているのを見たからな。
リヴァイには軽く声を掛けて
急いでここに来た。」
エルヴィンは机の上に盆を置くと、
ニヤリと笑って見せた。