第83章 落ち着かない日
「……タチの悪い重役ならその部屋にいる。
あと、これ。
多分何か如何わしい薬打たれた、と思う……」
注射器で刺された部分を指差すと、
ナイルの表情は一層曇った。
「……マズイな。
取り敢えず、お前は場所を移動するぞ。」
ナイルに腕を引かれるまま、
近くの部屋まで誘導される。
部屋に入った途端、
もう立っていることもままならないような
眩暈に襲われ、
部屋にあるソファーに座り込んだ。
「これ何?……媚薬?」
「ああ。多分な。
しかも今巷で話題の、
かなりタチの悪いヤツだ。」
自分の予感は見事に的中し、
その上もっと不安を煽られるような言葉を
付け足され、
もうため息しか出そうにない。
「ほんとここのお偉いさんは、
余計な事しかしないね……」
「……本当にすまない。」
厄介な重役の為に深く頭を下げるナイルは
気の毒でしかないが、
こっちも相当不憫なことは確かだろう。