第78章 転生でも、そうでなくても、
顔に“酷過ぎる”
と書いてある凛を見ながら、
ミケは話を続ける。
「俺も忙しかったからな。
確かにあまり相手はしてやれなかったし、
その浮気相手ほど、そいつのことを
愛してはなかったのかも知れない。」
「そんな訳ないでしょ。」
突然強い語調で言葉を塞き止められ、
発言を止めた。
「大して愛してなかった相手なら、
ワインだってチーズだって、
別れてすぐに捨てられるし、
捨てなくても一人で簡単に消費できるよ。」
こいつは当たり前のような顔で
的を射た言葉を投げかけて来るから不思議だ。
まさにその通りだとも思うが、
自分ではそう思いたくなかったのも事実だった。
「それに、そこまで好きじゃない相手に
浮気されたんだったら、別に引き摺らない。
まぁ私だったら、酒のつまみ程度の
話のネタくらいにはするけどね。」
凛は場の空気を
濁った物のままにさせまいとしているのか、
少し冗談めかして笑って見せた。
「大丈夫。
ミケはその彼女をちゃんと愛せてたよ。」
「……本当に……何なんだ、お前は……」
気が付いたら凛を抱きしめていた。
温かい匂いを全身で感じるように、
身体全体で包み込むような抱擁を続けた。