第76章 過去と今の差し替え
「ねぇ、まだ昼前なのにいいのかな?」
「休みの日くらい、
何しようと勝手だろう。」
若干の後ろめたさを感じつつ、
自分の目の前に置かれたワイングラスを
手に取る。
中には濃い色で赤みがかかった、
如何にも樽熟し、濃厚そうな白ワインが
注がれていた。
「最近飲むタイミングがなくてな。
一緒に飲んでくれると助かる。」
「勿論喜んでご相伴にあずかるけど、
こんな高そうなワイン、誰がくれるの?」
「……大した人じゃない。」
あまり言いたくない人からの
贈り物なのだろうか。
視線を逸らされ、
それ以上何も口を開かなくなったミケに
視線を送る。
「じゃ、昼前からご馳走になります。」
小さくグラスを掲げて見せると、
すぐにそれに重なったミケのグラスが
チン、と淡く高い音を立てた。