第75章 虚栄心
「はぁっ……、」
珍しく肩で息をするエルヴィンの顔を、
再び覗き込む。
顔の熱はだいぶ引いてきたようで、
最初に露わになった妖艶さは
かなり落ち着いていた。
「君を満足させずに、
自分だけ気持ち良くなってしまって、
申し訳ない……」
「いや、色んな意味で、十分満足したし、
気持ち良かったよ?」
「……もう何度も君に言っていることを、
もう一度言ってもいいか?」
「……なに?」
「本当に、君にはいつまでも敵いそうにない。」
そう言って微笑を溢すエルヴィンを、
無意識のうちに抱きしめる。
自分より熱を持った体温や汗ばんだ身体さえ、
心地よくすら感じた。
「……私もそれ、常に思ってるけどね。」
「凛。もう一度したい。」
「ねぇ。今話の流れおかしくなかった?」
突然180度会話の方向性を替えられ、
一旦エルヴィンの身体を離すが、
また強く抱きしめられ、
すぐに元の胸元へ収まる。