第72章 ●好きなことを好きなだけ
その時、肩に生温い感触が落ちる。
触れると案の定濡れていて、
少し凛を離して顔を見ると、
右頬に細い線が奔っていた。
「……すまない。また泣かせてしまった。」
「いや…こっちこそ、ごめん。
ほんと、泣くつもりないんだけど……」
呼吸はだいぶ落ち着いたようで、
普通に話せるようになっていることには
一先ず安心するが、
この涙については憂慮しかない。
「これ、本当に気にしなくていいから。
そんな顔しないで。」
涙を手で簡単に拭った凛に、
そっと頬を撫でられる。
自分は今どんな表情をしているのか
分からないが、
凛の心配そうな顔を見る限り、
いい顔はしていなということは確かだろう。