第70章 心揺るがされる出会い
「なっ、凛…!」
「急にそんな可愛い顔見せてくるんだもん。
なに、それは作戦?」
「……作戦な訳ないだろ。
そもそも可愛い顔ってどんな顔だよ。」
視界の隅で、モブリットの耳元が
赤みを帯びていくのを確認する。
やっぱり謀ではなさそうだ。
「ありがとう。
私なんかの為に色々考えて、
一緒に悩んでくれて。」
今日一番言いたかった言葉を、
一番近くで言う。
「……お礼を言いたいのは俺の方だからね。
凛、大好きだよ。」
「……それ、お礼じゃないじゃん……」
「ごめん。こっちの方が言いたかった。」
小さく笑うモブリットの手が、
優しく腰に回される。
モブリットの耳元と同じくして、
きっと私の頬も赤らんでいるだろう。
モブリットにこの世界で出会えて、
本当に良かったと心から思う。
いつだったか不意に口から零れ落ちた
“心揺るがされる出会い”
とは、正にこの出会いのことだったんじゃ
ないだろうか。
そう思ってしまうくらい、
この体温が大切に感じた。