第69章 明かされていくエニグマ
「……手掛かり無しか。」
「まぁ、そんな簡単にはいかないよね。」
ホテルを出たところで、
少し項垂れた様子のモブリットの肩を叩く。
実際、自分の中では
安心している節もあった。
これで何か手掛かりが掴めて、
元の世界へ戻れる手筈が整うことが
分かってしまったら
本当にこの世界を去らないといけない日が
来るかも知れないということだ。
今の自分の気持ちの中では、
それだけは避けたかった。
私はまだこの世界にいたい。
この世界で、調査兵団の団員として働き、
エルヴィンたちと生活を共にしていきたい。
このやりがいのある日々を
手放したくなかった。
元の世界へ戻って、
もしまた同じことの繰り返しのような人生を
送るようなことになったら……
そう考えただけで、
憂鬱な気分が身体中を支配した。