第65章 眠れない夜は
「母親は、何て?」
「……多分、私が先に
泣いちゃったからだろうね。
釣られてぽろぽろ涙溢し始めて。
その兵士の……カミルの、思い出話、
いっぱい聞いてきた。」
そこまで言ったところで、
もう堪えきれない思いが涙腺に到達し、
色々な感情が次々と溢れ出してくる。
「ダメだ……ごめん、ちょっと泣く……」
「いいよ。大丈夫。」
モブリットはそれ以上何を言うでもなく、
堰を切ったように泣き出した私を
ただ優しく抱きしめ、髪を撫でてくれていた。
もう留めなくてもいいと思った途端、
こんなに涙が出るのかと
自分でも呆れるほど泣きじゃくる。
モブリットの胸元のシャツは、
すぐに涙で色を変えた。