第62章 我儘でも、自分勝手でも、
「どこの貴族のお嬢様?
パーティーで知り合った人?」
特に厭味なつもりで言ったわけではないが、
どこか気まずそうにもしているエルヴィンを
弄りたくなり、質問攻めにしてみる。
「……ああ、まぁそうだな。」
「さっきまでの饒舌さがなくなったね。
何か後ろめたいことでもあるの?」
「ない!」
即答したエルヴィンを見て、
つい吹き出しそうになるが懸命に堪える。
「無いと言い切れる根拠は?」
「その肖像画はナイルが勝手に
持って来たものだからな……」
「ってことは、
お見合い写真みたいなもの?」
「そうだろうが、
別に俺は見合いを受けるつもりはない。」
意外だった。
エルヴィンは調査兵団の団長という
肩書を持っているけど、
他兵団の上層部と比べれば
給与がいい訳ではない。
そもそも壁外調査に出ている
兵士の一人でもあるエルヴィンを
主人にしたいと思う市民自体、
多くはないと思っていた。
貴族のお嬢様が気に入る要素は……
なるほど。そっちか。
不意に納得する答えが浮かび、
そういうことか、と呟いた。