第61章 ちょっとしたスリルとサービスを
「凛。どうした?」
エルヴィンは俺をクローゼットに
押し込んでおきながら、
平然とした声で話している。
こっちはエルヴィンを
心配しているだけなのに、何て仕打ちだ。
……と言っても、興味本位で
首を突っ込んでいたことも確かだが。
「一人……ですか?」
「ああ。」
「ナイルは?」
「さっき帰ったよ。」
「……そっか。無事に帰った?」
「その聞き方は何だ?
無事に帰さないとでも思ったか?」
「いや……うん。ちょっと思った。」
凛の問いはまさにその通りだが、
それより気になることがある。
何で凛は団長相手に敬語じゃないんだ?
二人きりの時は敬語じゃない。
ということはやっぱり……
そう思いかけた時、服の擦れる音が響き、
思わずクローゼットの扉のわずかな隙間から
目を凝らした。