第59章 もしもその時が来たとしたら
「モブリット!」
早々に訓練兵団基地を後にし、
馬を引きながら足早に歩くモブリットを
声を上げて制止する。
「ねぇ、どういうつもり?」
「凛も思っただろう?
もしかしたら、その部屋は凛の世界と
繋がることがあるかも知れないって。」
「思ったけど……
モブリットは私を元の世界へ
返したいってこと?」
自分の声は、きっと取り乱していただろう。
モブリットはすぐに足を止めた。
「そんな訳ないだろ。
凛にはずっとここに居て欲しいと思ってる。」
「それなら何で?
ここに居て欲しいと思ってくれてるなら、
その部屋に行く必要はないよね?」
私の問いの後、少しの間が空く。
返答を迷っているようにも、
返答することに抵抗があるようにも見えた。