第59章 もしもその時が来たとしたら
「凛。そういうことでいい?」
「ああ、うん。」
「……凛、ごめんな。」
モブリットの横に立つと、
申し訳なさそうなジャンの声が
後ろからそっと響き、ジャンの方に向き直る。
「いいよ。私は別に被害者ではないし。
……ただ、ずっと気になってたこと
聞いていい?」
「……なに?」
「女の子連れ込んでたホテルって、
訓練兵でも借りられるくらい安いの?」
「……気になってたことってそれ?」
「うん。
だって、給料も出ない訓練兵が
お小遣い程度で借りれるもんなのかなぁって。」
モブリットの若干呆れたような声を聞きつつ、
ジャンに質問を続けた。
「ああ……まぁ、他の部屋は無理だな。」
「あの部屋だけ安いってこと?」
「格段に安いし、殆ど利用客が居ない。」
「……何かいわく付きってことか。」
モブリットの呟きに、ジャンは小さく頷いた。