第8章 救世主……?
「……この状況で断れると思ってんの?」
突然耳元でドスの利いた声を出され、
少しばかり嫌な予感が頭を過る。
……もしかして、
ただのナンパじゃないのか……?
自分が今まで出会ったことのある
ナンパをしてくる男性とは
明らかに違う雰囲気を醸し出している。
「取り敢えず、ここ人多いから移動しよ?ね?」
体に似合わず甘ったるい声を出す、
いかつい男性に肩を抱かれたまま、
無理矢理に路地まで連れて行かれた。
埃っぽい路地は不安な気持ちを煽ってくるが、
それを彼らに悟られたら、
彼らの思うツボだろう。
出来るだけ平静を装って、
肩を抱く男性の手を払いのける。
「……何が目的なの?お金?」
「金はいい。
今は女が欲しい気分なんだよね。」
問いかけに被せる様に言い放たれ、
小さく身体が震えた。
それと同時に、
これは遊びに誘われている、なんて
生温い口説き文句じゃないことを確信する。
この状況を打開する為には、
強行突破にでるしかないだろう……
腹を括り、素早く後ろを向いて走り出した。