第53章 誘惑の仕方
「でもその手、ほんと不便だよね。
今は肩から吊ってなくて大丈夫なの?」
「問題ない。
ただ動きが制限されるから
それなりに鬱陶しいだけだ。」
足元から順に、
ゆっくりお湯を流していく。
スポンジなんてものはなく、
身体を洗うようなタオルも用意されていない。
これは手で洗えという無言の圧力か……
そう思いながら無心で石鹸を手で泡立てた。
「……洗うよ?」
「ああ。」
木で作られた
簡易な風呂椅子に座ったリヴァイの背中に、
泡立てた石鹸を置き、ゆっくり洗い始める。
……ゴツゴツしてる。
少し触れただけでも
何年も鍛え続けてきたのが分かる。
筋肉の層が積み上がっているような背筋だ。
この背筋だけで欲情できる自信はある。
そう言えば、こんな風に
じっくり触ったのは初めてだった。
一緒にローション風呂なんて
卑猥でしかないものに入ったことはあったけど、
その時はリヴァイの背中に少し触れただけで、
どうしようもなくムラムラしてきて、
後ろから襲い掛かってしまった気がする。
……ああ、やっぱりあの時も
背筋だけで色欲が湧いていたのか……
自分の性欲は相変わらずだ。