第52章 自由な選択を
「それぞれ関係性が深くても、
別に全員に本気だと
触れ回ってる訳じゃねぇんだから、
そんくらいいいだろ。」
「……なら、私はこれからもモブリットと
関係を持ち続けていいってこと?」
「それとこれとは話が別だが、
凛の意思で判断してくれればいい。
今、君は、自由なんだから。」
こんなタイミングで言われた“自由”なのに、
嬉しく感じてしまうのは、
エルヴィンの微笑みがあまりに優しいからだ。
今まで自分は自由に過ごしてきた方だと思う。
それでも不自由に感じていたのは、
自分で自分をその場に
縛り付けていたからだ。
動くこと恐れて、
その場に留まることを良しと思い込んで、
……いや、思い込んだことにして、
勝手に自由を制限しながら生きてきた。
そんな時二人と出会い、
二人の生き方を知り、
偶発的ではあるが、この場に来られて、
その場に留まる生き方をやめた。
止めざるを得ないくらい、
ここでの生活は波乱に満ちていて、
日々動かずにはいられない。
それこそ元の世界に居た時の方が、
色んなものに対する制限はないだろう。
それでも、私は今、
これが本当の自由なんだと感じていた。
自分で自分を見限ることもなく、
毎日充実していて、
何よりこの二人の側で生活することを
選べている。
これほど自由な生活は、
今まで経験したことがない。