第50章 大好きだから、
「……凛?」
部屋のドアをノックしてすぐ、
ドアを開けたモブリットは
如何にも事態が分かっていないような
困惑した声を出す。
「やっぱり起きてたか。」
その一言で、何かを察したのだろう。
小さく頬を緩めるモブリットの表情は、
笑ってはいなかった。
「……仕事してた?」
「いや、」
そう言ってモブリットが指差した先にある、
机の上に伏せられた本に視線を移す。
「難しい本読んでたよ。
こんな時しか読む気起きないから。」
困ったように笑うモブリットを、
思わず強く抱きしめた。
「凛、言ってただろう?
確かにこんな時くらいしか
読める時ないなぁと思って。」
凛に抱き着かれたまま
ゆっくりドアを閉めたモブリットは、
すぐ凛を抱き返した。