第44章 優先順位
「右って利き腕だよね?
不便だったでしょ。」
書類の散乱している机の上を
早々に片付け、
部屋の隅の小さなポットでお湯を沸かす。
ティーポットに
茶葉を入れていたところで、
リヴァイに腕を掴まれ、視線を向けた。
「……凛。
調査後すぐに男の部屋には行くなと、
誰かに忠告されてないのか?」
「……ああ。
そんな噂なら聞いたことあるけど。」
「噂通りのことが起きる前に、
早く部屋を出ろ。
俺は一人でどうにかなる。」
「……左手じゃ、
抜くのも難しいんじゃない?」
そう問いかけた途端、この日初めて、
僅かながらリヴァイの頬が緩んだ。
「これから俺がすることを分かってんなら
尚更出て行け。
もうお前に乱暴な真似をしたくない。」
「そうだろうね。」
……これは何を言っても無駄だろう。
ポットに掛けた火を止め、
リヴァイの手を引く。
「……なんだ。」
「逆ならいいんじゃないかな、と思って。」
もうリヴァイの話を聞く気はない。
というか、聞いても平行線のままだ。
「どういう」
勢いよくベッドに押し倒し、
まだ言葉を紡いでいる最中の唇を、
乱暴に奪った。