第40章 好きの種類
「モブリット。
お前も凛が好きなんだろう。」
凛が個室を出て行ってすぐ、
ナイルが席に着いての第一声に、
モブリットは目を丸くする。
「なんだ。無自覚か?
またお前も面倒だな。」
「……無自覚も何も、違いますから。」
「エルヴィンに気でも遣ってるつもりか?」
ナイルはウイスキーを一口含み、
面白そうに頬を緩めた。
「……別にそういう訳でもないですが、
凛を恋愛対象として
見ているつもりはありません。」
「それなのにそんなに過保護なのか?」
「団長と兵長から
厳しく言われていますので……」
「それだけじゃないだろ。」
……師団長は、
自分の何が分かっているんだ。
ふと、壁外調査出発前に、ハンジさんからも
同じようなことを言われたことを思い出す。
モブリットは凛が好きなんだと思うよ。
ただ一言、それだけ言われ、
その場では否定も肯定もしなかった。
凛のことを嫌いなはずがない。
よく気が利いて、努力家で、
何にでも真面目で……
そんな人に好意を持たない訳がない。
ただ、“好き”にも種類がある。
これは恋愛感情の好きとは違うと
自分では思っている。