第38章 戦う力を
凛はそのまま眠りに落ち、
エルヴィンは凛を抱き寄せたまま
久し振りに十分な時間の睡眠を得る。
それは朝目覚めた瞬間から明々白々で
最近にはなかった満足に休眠した、
という充足感があった。
「……エルヴィン、おはよう。」
隣でまだ眠そうに目を擦りながら
起きてくる凛を
不意に抱きしめる。
彼女を抱きしめるだけで
何故こんなにも力が漲るのだろう。
今まで誰をどんな風に抱いても
満たされなかった心の空白部分は
凛と出会ってから
急激に埋められている気がしていた。
「凛。ありがとう。」
「……私の方こそありがとうだからね。」
口を衝いて出た言葉は、
凛の笑顔に受け入れられ、
「エルヴィン、ありがとう。」
と、腰に回された優しく温かい手は、
自分の心を掴み、離さない。
つい先日まで抗っていた感情を解放した途端、
ここまで楽になれるのか……
そう思わずにはいられない程、
自分で自分に押し付けていた重圧は
驚くほど軽くなり、
もっと俊敏に鋭敏に戦える気さえ起きていた。