第36章 熱の行方
「……凛。すまない。
俺がいつもと違う様子だから
気にしてくれているんだろうが、
実際こっちの世界では
これが本来の俺なんだ。
何故そうするのかは特に分からなくていい。
だからもう
そんな気に掛けてくれなくていいんだ。」
「そう。」
端的に返事をした凛は、
エルヴィンのループタイを引き寄せると、
再び唇を重ね、触れるだけのキスをした後、
すぐに唇を離す。
「“こっちの世界のエルヴィン”も
“私の世界に居た時のエルヴィン”も
私にとっては同じエルヴィンなんだよ。」
エルヴィンは引き寄せられたまま口を噤む。
「エルヴィンが
私を拒否するようになった理由は
まだ分かりそうにないし、
これから分かるのかも分からないけど、
……もうどうでもいいや。」
凛はそう言うと、
エルヴィンを強く抱きしめた。
「エルヴィン。
もう私も結構限界なんだよね。」
「……凛?」
凛の声が少し震えていることに気付き、
身体を離そうとするが、
「このままがいい。」
と一言言われ、動きを止めた。