第5章 モブリットの情動
「それに、あの世界で、
私があの精神状態の時に出会ってなければ、
こんな風にエルヴィンを
知ろうとも考えなかったと思う。」
「あの精神状態の時?」
俺の食い付いたポイントが
良くなかったのだろう。
一瞬表情を強張らせた凛さんは、
小さく息を吐いた。
「ごめん……
それを言うと、モブリットに別の心配を
掛けそうだから言えない。」
「……俺が凛さんに
心配を掛けて欲しいって言っても、
……ですか?」
また自分は余計なことを口走っている……
心の中で思ったとしても、
口に出さずにいることなんて
今まで容易くできていた筈なのに、
凛さんを前にすると、
何故か心の声まで口から零れ落ちた。