第32章 エルヴィンの感情
「……本当にだいぶ散らかってるね。」
部屋に入っての第一声。
エルヴィンは面白そうに肩を竦める。
「だから言っただろう?
整理する暇がないんだ。
調査までに少しは片付けたいんだけどね……」
エルヴィンがいつも書類をしている机は、
それこそ書類で埋もれてしまっていて、
空白が殆ど見当たらない。
もはやそこで書き物をするなんてことは
無理そうだ。
唯一無事なのは、応接用に使っている
ソファーとテーブルセットだけだった。
「凛がこの部屋を見たら
片付けたくなるだろうと思ってね。
あまり部屋に入れたくなかったんだが。」
「……そうだね。でもこれだけ
扱いに困りそうな書類が多かったら、
下手にいじれそうにない。」
書類に軽く目を通すが、
どれも今必要な物なのが分かる。
「とりあえず凛はそこで書類をしてくれ。
俺も今日はそっちで作業させてもらうよ。」
エルヴィンは応接テーブルを指さし、
一人掛け用のソファーに腰掛けた。