第30章 女慣れした新たな仲間
「久し振りにここに来られたなぁ……」
壁外調査一週間前。
凛は調査兵団の訓練場に来た。
訓練場と言っても、
日本の主な訓練学校にある
運動場のようなものではない。
調査兵団の訓練場は、広大な森だ。
その森には至る所に
巨人に見立てられた模型が隠されている。
それを突然出現させ、
模型のうなじを狙い削ぐことで、
兵士は巨人を駆逐する為の
反射神経や俊敏力を養っていた。
まだここにタイムスリップしたばかりの頃、
一度だけエルヴィンやリヴァイの様子を
こっそり窺いに来たが、
なぜかすぐにバレてしまい、
結局訓練風景は見られないままだった。
二人が訓練風景を見せたくないのは
何故なのだろう。
元の世界にいる時から、エルヴィンは特に
仕事をしている姿は見られたくない、
と言っていた。
見られたくない理由は何なのか。
全く理由が見当たらないが、
それだけ嫌がっているのにも関わらず
訓練風景の見学をすることに
抵抗がない訳じゃない。
……だけど気にならない筈がない。
それに今回は、バレない自信があった。
「ほんとにしっくりくる、これ。」
凛は徐に髪の毛を撫でる。
頭にはハンジお手製の金髪ウイッグが
取り付けられていた。