第158章 番外編《それぞれの“これから”のすごしかた》
目を瞑ったまま、黙ってしまったリヴァイを見つめ、三年前と変わらない白い肌をゆっくりと撫でる。
触った感触もあの時と同じだ。
とても滑らかで、指先は何の抵抗もなく頬を滑る。
「俺はあの時と何も変わってねぇよ。」
ゆっくり開いたリヴァイの柔らかい表情に、見惚れてしまう。
その表情を瞳に焼きつけるようにリヴァイを見つめ返すと、三年前よりしなやかさを感じる手のひらが、私の頬をそっと撫でた。
「ただ、あの時と違うのは、守るべき対象がお前だけになった、ってことだけだ。」
「……ボディーガードの仕事してるのに?」
反射的に問うと、リヴァイはフッと息を漏らして笑う。
「ああ。あの時ほど替わりの利かねぇ仕事じゃねぇからな。
この仕事をしていた目的も達成されたし、辞めようと思えば辞められる。」
「ボディーガードの仕事をしてた目的……?」
「依頼主は各国にいる。
だから仕事をしながらお前を探すこともできた。
お前が何処の国の誰なのかも分からねぇままだったが、会えば確実に分かる自信は何故かあったんだよ。」
拍動がまた強く速く鳴りはじめる。
リヴァイから視線を逸らせないままに、顔を顔がゆっくりと距離を縮める。
「凛。お前を見つけることが出来た今、この仕事を辞めることに何の抵抗もねぇ。
これからはもっとお前との時間を取れる仕事を探す。」
「……ボディーガード、似合ってるよ……?」
「お前はスーツでオールバックなら、何でもいいんだろ?」
「それについては、完全に否定は出来ないかな……」
思わず肯定してしまうと、穏やかに微笑むリヴァイの表情が、目前に迫る。
“この世界”の男性に興味が湧かない。
数時間前、ハンジに言ったその言葉は、早速だけど撤回しよう……
モブリットもリヴァイも、今は同じ世界の人間だ。
リヴァイの行動を拒否する理性を頭の片隅に追いやったままで、優しい瞳を見つめ返した。