第158章 番外編《それぞれの“これから”のすごしかた》
ミケが部屋を出てから暫くして、ゆっくりとふすまが開く。
ふすまの隙間から、遠慮がちに入って来たのはモブリットだった。
「……お邪魔します。」
「あ…どうぞ、どうぞ。」
何故か硬いやりとりになりつつ、モブリットは凛の隣にゆっくり座った。
「……ごめん、なんか、いざ二人きりになると、」
「緊張するよね。」
モブリットの言葉に被せる様に言ってみると、モブリットの表情は少しだけ緩む。
「うん。かなり久しぶりだからかな……」
「そうだよね。
でも私は結局3年しか空いてない訳だし、モブリットよりは久しぶりに感じてないのかも。」
「3年か……」
呟くように言ったモブリットは、凛の方へ向き直った。
こうして正面から真摯な瞳で見つめられると、それだけで心臓は細かく跳ね上がる。
「3年も待たせてごめん。」
「え、」
予想外の謝罪に、気の抜けた声が出る。
「すぐ見つけるつもりだったんだ。
凛を、少しでも一人にさせたくなかった。」
「モブリット……」
「凛がタイムスリップして来た時、凛のいた世界について、何でもっと聞いておかなかったんだろうって、すごく後悔した……
寂しい思いさせて、ごめん……」
左手の甲が、躊躇いがちに近付いた温かい手のひらに包まれる。
記憶には鮮明に残っている懐かしく優しい体温が心地いい。
もっと深く感じたくなって、手を裏返し、指を絡めた。