第158章 番外編《それぞれの“これから”のすごしかた》
「っ……、」
「お前の弱い部分も覚えてる。
これが何よりの証拠だろう?」
小さく息を漏らした事実に付け込むように、顔と顔の距離を縮める。
もうあいつらに遠慮してやる気はない。
それこそ前世から思っていたことだ。
少しずつ唇を寄せていったその時、凛の両手によって強引に口を抑えつけられた。
「ま!待った!」
「……ダメなのか?」
「そりゃダメでしょ!」
「俺たちの前世では、そんな風に拒否されたことはなかった気がするんだが。」
「あの時と今とじゃ、状況が違うからね!!」
明らかに動揺している凛に口を抑えられたまま、くぐもった声で会話をする。
焦りに焦った凛の表情が面白くて、思わず吹き出しそうになる。
「あの時はタイムスリップの影響もあって、性欲とか睡眠欲とか色々おかしかったけど……
今は比較的正常な人間だから!
もうあの時みたいに自由で勝手なことはしないから!」
堪えきれずに笑い出してしまうと、凛の不審気な視線に見入られた。
「すまん。あまりにお前が必死だから。」
「……必死にもなるよ……
あの時の状況については、今も反省中なんだから。」
もしかしてからかってた?と顔を覗き込まれ、反射的に凛の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「からかってはない。
だが、凛が凛のままでいたことに安心した。」
「でも、私だって色々変わったからね?」
「例えば?」
すかさずそう問いかけると、凛は僅かに首をひねった。