第157章 ~epilogue~
「……取り敢えず、場所を変えようか。」
立ったままでエルヴィンとリヴァイ、モブリットにも、立ち上がることを視線で促す。
さすがにこのまま視線を浴びながら話を続けることには抵抗がある。
「じゃぁ、久し振りに好古の家にでも行く?」
「おじいちゃん家は今誰も住んでないのに、行ってどうするの?」
「私、鍵預かってるからね!
誰も住まないと家の老朽化が進むから、って託されてるの。
だからたまにくつろぎに行ってる。」
そんなの聞いてない!と言いたくなってしまったが、別に私に報告する必要はないのか……
あの家は、元々おじいちゃんに借りていただけの家だ。
思えばたった数か月暮らしただけの家なのに、エルヴィンとリヴァイが一緒だったというだけで、あの場所は自分にとって、すごく大切な空間だったことに気付く。
またあの家で、みんなで集まれる日が来るなんて……
そう考えただけでも、微かに涙腺が刺激されることは免れなかった。
「……それならまずは掃除が必須だな。」
転生しても相変わらずだと思ってしまうリヴァイらしい呟きに、エルヴィンは軽く吹き出す。
「こんな時間から掃除をするのか?
掃除は明日でいいだろう。」
「バカいえ。
汚ねぇ家でくつろげる筈がねぇだろうが。」
「え、何で汚い前提なの?」
「汚いのは大前提ですね。
掃除道具はちゃんとありますか?」
「モブリットまで!
私のこと何だと思ってるの?」
範司はブンブンとモブリットの肩を前後に揺らした、その時。
「……凛?」
アスファルトに零れた雫に気付いたモブリットは、そっと凛の腕を摩った。