第157章 ~epilogue~
「振り向いて見たら、今にも泣き出しそうな顔してる男が立ってて。」
「よ、余計なこと言わないで下さい!!」
「でも、その顔を見て、ふと思い出したんだよ。」
モブリットの焦った声を掻き消すような、範司の穏やかな声は、辺りに静かに響いた。
「私は、あなたに命を助けられた。」
モブリットの喉元が緩く動く。
範司のその言葉に反応したのは、リヴァイも同じだった。
「モブリット。
あなたは私の、一番の腹心の仲間だった。
違う?」
「……違わない、と、私が言ってもいいんですか?」
「いいよ。ありがとう、モブリット。」
範司の表情が、明らかに変化しているのが分かる。
記憶を思い出してきた兆候なのだろうか。
“あの世界”で見ていたような凛々しい表情は、今の範司にも相応しい顔付きだった。