第156章 I keep looking for you.
「今の私は、これですら酔えるのか……」
範司の帰りを待ちつつ、ちびちび飲んでいた缶ビールに視線を落とす。
缶チューハイを飲み切った時より、明らかに酔いが回って来ていた。
この状態なら、軽いナンパに付き合うことだってできるんじゃないだろうか。
そんなことを考えてみて、思わず顔を伏せて小さく吹き出してしまった。
その時。
「……気分が…悪いのか?」
少し掠れた男性の声が目の前で聞こえ、顔を上げるより前に声を発する。
「いえ、大丈夫です。
……放っておいて下さって結構ですから。」
「放って置けないよ。顔色があまり良くない。」
反射的に突き離すような発言をしてしまったにも関わらず、予想外に食い付いてくる男性に驚きつつ、やっぱりお酒の力を借りても、ナンパに付き合う気分にはなれそうにもないことを確信した。
「久しぶりにお酒を飲んだから、ちょっと早めに酔いが回ってきてる、ってだけなので。」
「久しぶり?最近酒は飲んでないのか?」
……何なんだ、その問いは。
若干の頭痛が込み上げたこともあり、このナンパ男らしき人物の相手をするのが、段々面倒になって来る。