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君と鼓動が重なる時・2【進撃の巨人】

第155章 ただいま



「あいつは最後の最後まで、まだそんなこと言ってたのか。」

「ああ。
相当心配なんだろうな。俺たちのことが。」

「言われなくても既に自由にしてる。」


別の意味でだが。と心の中で呟きながら、リヴァイは立ち上がった。



「そろそろミケとハンジを呼ぶぞ。
あいつらも凛の話が聞きてぇだろ。」

「……そうですね。」


リヴァイは早々に部屋を出て行ったが、モブリットはドアの前で、はたと立ち止まった。




「どうした、モブリット。」

「エルヴィン団長、」


振り向いたモブリットの直向きな表情に目を奪われる。

不意に身体が強張った時、モブリットはまた口を開いた。



「……団長は、凛に伝えられたんですか?」


何を、と訊ねなくても、聞かれていることは分かった。

俺が恋敵であるにも関わらずこんな心配をしてくるなんて、やはりモブリットはモブリットだ。
そう思うと一瞬硬くなった身体は、すぐに解れた。



「どうだろうね。
本当に最後だという瞬間に口にしたが、凛に聞こえていたかは分からない。」

「……そうですか。」

「モブリット、ありがとう。
心配を掛けたな。」


思っていた通り、想像していた以上に自由が利くようになっていた身体を立ち上げ、モブリットの正面まで足を進める。





「私の目的は変わらない。
この世の真相を掴み、巨人から世界を取り戻す。」




エルヴィンの力を帯びた声が、部屋の空気を振動させる。


モブリットはその声色に、武者震いする身体を抑えられず、思わず拳を握りしめた。





「ついて来てくれるね、モブリット。」

「勿論です。」


硬く結んでいたモブリットの拳は、左胸に力強く当てられた。









俺は歩き続けるしかない。




殺戮者と呼ばれても、仲間たちの屍の上を踏み越え続けることになっても、これからの目的は変わらない。


自分の為に、仲間の為に、

……いつまでも自分の味方だと言ってくれた、生涯唯一、愛する人の為に。





いつの間にか閉じていた目を見開く。

さっきとは違った世界が、少しずつ鮮やかに広がっていく気がした。




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