第153章 ●ありがとう
「……凛」
口内に溢された自分の名前を呑み込む。
もっと呼んで欲しい。
もっとエルヴィンの声が聞きたい。
エルヴィンが呼んでくれた私の名前を、自分の中に刻みたい。
「エル…ヴィン、もっと……、」
この言葉だけだと、何を求めているかなんて分からないだろう。
だけど言わずにはいられなくて、喘ぎながら必死で言葉を発する。
エルヴィンは一度唇を離すと、汗で額に張り付いる凛の髪の毛を、穏やかな手付き撫でて整える。
そして優しく潤った瞳で見つめ、凛の耳元に口を近付けた。
「凛。
…凛、いくらでも呼ぶよ、」
何で言いたいことが分かったの?
そう聞きたくなるより先に、エルヴィンの発言の意味を理解する。
「エルヴィン…、エルヴィン……、」
きっとエルヴィンも、私と同じことを考えている。
自然と寄せられていたエルヴィンの耳元で、同じように何度も名前を呼ぶ。
顔を見なくても、エルヴィンが微笑んだのが分かった気がした。
名前で呼び合うだけで湧き出して来る絶頂感を堪えながら、徐々に動きが重く、速くなっていく身体を受け止める。
「んっ、あっ…、あぁっ…」
次第に名前を呼ぶことも儘ならなくなってしまい、明度の高い喘ぎ声が零れ始めた。
身体が自分の意思を無視して、達することを選ぼうとした時、エルヴィンの腰付きは一層深さを増す。
激しく濃い絶頂と共に、私の内側は、解き放たれたばかりの生暖かいエルヴィンの一部を、待ち望んでいたように受け入れた。