第153章 ●ありがとう
「……俺の大切な人になってくれて、ありがとう。」
私だってエルヴィンに聞いてもらいたい言葉がある、そう言いたくても、嗚咽が漏れそうなくらい涙が次々溢れ出していて、言葉を発することも難しい状態だった。
それでもどうしても伝えたくて、またエルヴィンに唇を重ねる。
優しく重なった唇を動かすことで言葉を紡ぐと、意味を察したエルヴィンの頬は綻び、碧い瞳は、また、大粒の雫を生み出した。
互いがここに存在したことを、全身に刻み付ける様に、エルヴィンの身体はゆっくり丁寧に動き出す。
この感覚を、絶対に忘れたくない。
同時に、エルヴィンにも忘れて欲しくない。
自分勝手な感情ばかりが込み上げてくるのに、今はそんなエゴを省みる気なんて起きず、エルヴィンの首筋に腕を回し、出来るだけ深い部分までエルヴィンを誘い込む。
腰に回されているエルヴィンの手は熱く、身体も心も……自分の全てを包まれているようだった。
いつまでもこうして抱かれていたい。
繋がっていたい。
そう感じているのは、きっと私だけではない。
そう思えるくらいエルヴィンは私の内部をゆっくり慎重に、それでも濃厚に犯していく。
いつも大切に抱いてくれていることは伝わっていたけど、今日はもっと様子が違っていた。
大切なんて言葉では言い表せないくらい、エルヴィンの手付きも動きも繊細で柔らかく、それなのに快感を覚えずにはいられない。
深く重なった唇を割って、舌同士が絡み合いながら、互いの嬌声が口の中を行き来している。
身体中が快感と幸福感に包まれ、この感覚にずっと囚われていたい、強くそう思った。