第145章 ●この感情はここだけで
「……君の言いたいことは分かってるよ。
だが、それを君から言われたからって、凛以外の女性に興味を抱くことはもうないよ。」
「っ…、そんなの、まだ分からない、よ?」
「分かるよ。」
息の弾む中、エルヴィンの胸板に預けた頭を上げようとするが、それは容易く阻止され、再び顔を埋める。
「凛も知っての通り、俺は頑固なんだ。
その上、一度こうと決めてしまえば、その意志はもっと根強く固いものになる。
これは自分でもどうしようもない。」
どうしても切なそうに聞こえる声と言葉が、胸の奥に浸透していく。
エルヴィンは今、一体どんな表情をしているのだろうか。
決して身体は離されることがなく、強く抱きしめられたままでエルヴィンはまた口を開いた。
「凛が居なくなっても、俺は変わらない。
この命がある限り、調査兵団の団長として兵団を導き続けるし、時には人間性を捨て、残酷な判断を下す。
そして調査が終われば、凛が側にいなくとも、胸に焼き付けた君を抱く。
他の女性で満たされる瞬間などないし、そんな気休めは欲しくもない。
だから、それを繰り返すつもりだよ。」
「口説き文句が強力すぎるよ……」
「俺はただ本音を話しているだけだ。
もう君には、嘘を吐くつもりも、誤魔化すつもりもないからね。」
抱き竦められたままでは、エルヴィンの顔を見ることは出来ない。
それでも、哀調を帯びたような声が表情までをも予測させ、自分の胸を締め付けた。