第145章 ●この感情はここだけで
「はぁっ、ん…、」
バルコニーには、凛の甘い吐息ばかりが零れている。
背中に唇が触れている。
それだけしかされていないとは思えない程のいやらしい息遣いに、下半身は反応しっぱなしだし、頬は緩みっぱなしだ。
「……エルヴィン、今、ニヤニヤしてるでしょ……?」
「顔を見なくても分かるのか?」
呼吸の上がって来た凛の顔を、後ろから覗き込む。
紅潮しかかった凛の頬にそっとキスを落とすと、後ろ手で首に手を回され、同じように頬にキスを返された。
「なんか、エルヴィンのことも、かなりよく分かるようになってきた気がする。」
「言われたことのない言葉だな。
俺は博打打すぎて、分かりにくいらしいから。」
「うーん…そうだね。
仕事のことに関してだったら、私もエルヴィンの考えを理解しきれてない気がする。」
引き寄せられたままで、凛はふふっと笑みを溢す。
「……でも、こうして仕事以外で一緒に過ごしてる時のエルヴィンは、分かり易い…というか、すごく素直で可愛いなぁと思うよ。」
「素直で可愛い、か。
それも言われたことがない。」
思わず吹き出してしまいながらも、凛を強く抱きすくめる。
“可愛い”なんて言葉でも、それがプライベートの俺に対する正直な気持ちだと思うと、嬉しささえ感じられた。