第143章 ●衝動的に
「ふっ…、ん」
反射的に出たいやらしい吐息を、急いで呑み込む。
扉のガラス越しに見えるエルヴィンの表情は、いつもの優しさを纏ったままだ。
「……エルヴィン、ダメ…、です。」
エルヴィンの腕を掴み、行動を阻止してみると、近付いた唇が耳裏に湿った感触を送った。
「んっ…、」
「ダメ、という割には抵抗が緩いね。」
エルヴィンの指先は、強引に掴んだり弄ったりすることはなく、しきりに臀部だけをなぞるように這い回り、快感を覚えずにはいられない。
当たり前だが、今まで出会った痴漢の行為とはまるで違う。
スカート越しなのに、十分過ぎるほど感じてしまっていた。
身体は小刻みに震え、呼吸は容易く乱れてくる。
咄嗟に吊革から、扉近くの手摺りに手を移動させ、しがみ付いた。
「これだけしかしていないのに、随分辛そうだ。」
「はぁっ…、や…、ほんと、声が……」
「そこは我慢してもらわないと、教育上悪影響を及ぼしそうじゃないか?」
振り向いてすぐ視界に入ったエルヴィンの視線は、学生たちを捉えていた。