第141章 事実の整理
「……私は、もうエルヴィンの世界には行けないの?」
一番聞きたかった言葉を溢すと、一瞬の沈黙の後、範司に優しく頭を撫でられる。
「また同じ部屋にいたら、きっと行けるだろうね。」
「それなら、」
「無理だよ。
凛はもう、エルヴィンたちの世界では生き続けられない。」
範司の言葉は心の奥底で響き、重く心臓を締め付ける。
その可能性を考えなかった訳じゃない。
それでも、いざそう断言されると、言いようのない息苦しさで、身体は強い硬直を起こした。
「……日記によると、最高でもタイムスリップ先で過ごすのは、トータルで3か月が限度なんだって。
凛の曾祖父は、色々実験したようだよ。
この世界と別の世界の行き来を、繰り返していたみたい。」
範司が机の上に一枚の資料を広げる。
そこには折れ線グラフが描かれていて、曾祖父が世界を行き来した回数や期間が、分かり易く記されていた。
「実際凛は、向こうの世界で3か月は軽く超えて過ごしてた訳だから、もう戻るのは危ない。
多分、ギリギリの状態だったと思う。」
「……そうだったんだろうな。」
エルヴィンに肩を抱かれると同時に、頬に生暖かい感触が奔った。