第140章 言いたい言葉は、言えない言葉
「だが、自分の身体が全く操作できないのは困る……
君を満足させる意志すら、自分の身体に完全に無視された。」
「ふふ…、いいね、そういうの。」
「良くないよ。凛の悶える顔を見るのが好きなのに。
殆ど堪能できなかったじゃないか。」
「そんな私のせいみたいな言い方されても。」
何故かふて腐れたような表情を浮かべるエルヴィンが可愛くて、頬は緩みっぱなしだ。
エルヴィンの気持ちよさそうな顔は何度も見たことはあったけど、今回のような快感を全面に露出させた表情は初めて見た。
「エルヴィン、前回タイムスリップして来た時より、性欲に溺れやすくなってるのかな?」
「どうだろう……」
エルヴィンは考えを巡らすように、また軽く目を瞑った。
「それもあるかも知れないが、多分他の影響の方が大きいよ。」
「他って?」
「……前回ここに居た時より、俺が凛のことを強く想っているからだと思う。」
曖昧な言い回しでも、鼓動の音が早くなるのは免れない。
それに今なら、その言葉を深く掘り下げて聞きたいと思ってしまう。
「……“想ってる”っていうのは?」
私がそんなことを聞いてくるなんて予想外だったのか、エルヴィンは一瞬目を丸くするが、すぐに少し緩んだ表情に切り替わる。
「……凛のことを」
その時、玄関でインターフォンの鳴る音が聞こえた。