第137章 大切な時間
しばらく静かに抱き合っていたが、凛は何かを思い立ったように顔を上げた。
そして瞳を見入られてすぐ、何も声は発さないままに目を瞑る。
その意図を感じ取り、そっと唇を重ねた。
……凛は俺のこの感情を読み取っていたのだろうか。
そう思わずにはいられないタイミングのキスの催促に驚くが、嬉しさの方が断然大きい。
さっきまで心の中は酷く澱んでいたのに、こうして柔らかく温かい感触を味わうと、濁った感情は簡単に浄化されていく。
何度も唇を啄み、優しく重ね合い、それを繰り返すことで、動揺していた鼓動が落ち着いていくのも感じられた。
それと同時に、少しの眠気が襲う。
……なぜ今のタイミングで……
いくら殆ど眠れていないとはいえ、凛と過ごしている時に眠くなるのは頂けない。
だが、調査中から今日まで、ほぼ睡眠がとれていない。
深い安心感に包まれている今、眠気が襲うのも仕方ないのかも知れないとも思ってしまう。
取り敢えず眠気を誤魔化す為、瞑っていた目を開けようと試みる。
そんな抵抗も虚しく、それすらも出来ない程の強い睡魔に促され、瞼は開かないままに意識は強制的に手放された。