第136章 調査中は思慮の時間
「それは少し気になりますね……」
あらかた話し終え、少し困惑した表情を浮かべるモブリットの顔を横目で見る。
これを誰かに話すべきか迷っていたが、もし話すならモブリットだろう、とも思っていた。
凛を想っている人間の中だったら、きっと彼が一番客観的に物事を捉えることが出来る気がしていた。
「今まで通りの状態に戻しているのに、凛の身体は強く睡眠を欲していた、ということですよね。」
「ああ。今までになかったことだから少し驚いた。
今まではどんなに疲れていようと、彼女の性欲自体は衰えなかったからな……
連日の激務が影響している可能性も、全く否定できない訳ではないが、気に留めておいた方がいいと思ってね。」
「そうですね。
杞憂に終わればいいんですが……」
「きっと杞憂に終わるよ。」
なるべく心配を掛け過ぎないように、明るくそう言いながら、曇った表情をするモブリットの肩を軽く叩く。
この情報が、調査中に余計な感情を湧き出させることになるのは避けたかった。
今彼はかなり上がり調子の状態なのに、これを乱してしまうのは頂けない。
それに凛こそ、それを望んではいないだろう。
「だが調査から帰ったら、凛の様子をまた注意深く観察する必要がある。」
「はい。凛は心配を掛けまいと誤魔化す可能性もありますから……
調査中の凛の様子は、ピクシス司令からも伺っておきます。」
「その方がいいな。」
モブリットの意見に同意しながら、視線を空に向ける。
空一面に広がる無数の光たちは、今にも降って来そうなほど近くに感じられた。
……本当に杞憂に終わればいい。
ただひたすら、凛の身を案じながら、視界をゆっくり閉じた。